渋谷区の原発事故に関する放射性物質の対策について「子どもたちを放射線被ばくから守るための請願」について

2011年06月10日

震災で浮かび上がった日本の「脆弱性」と自治体の取り組むべきポイント~寄稿して頂きました~

経済評論家の渡邊哲也氏に、震災3カ月を迎えて地方自治体の直面する課題について書いていただきました。
震災が浮かび上がらせた日本の「脆弱性」に対し、被災していない地方自治体は今後どのように対応していくべきか?



示唆に富む内容です。
ぜひご覧くださいませ。



※震災1カ月の時点で書いていただきました、
「自治体が見据えておくべき、今後の日本経済のゆくえ」
http://blog.livedoor.jp/kenposzk/archives/51879193.html
も併せてご覧くださいませ。



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震災で浮かび上がった日本の「脆弱性」と自治体の取り組むべきポイント


■震災から3ヶ月


 東日本大震災から3ヶ月が経過する。
 今回の震災を受けて、日本社会の様々な脆弱性と問題が浮かび上がっている。ここで浮かび上がった問題を糧として、活かしてゆくことこそが我々生かされている物の仕事であり、将来を生きる人々への責務であるとおもう。
 
『結果には必ず原因が存在し、その原因部分を取り除かない限り、問題は永遠に解決しない』


 問題点を分析する上で、まず必要なのは問題の切り分けである。
 その為には、時系列で整理して、政治と行政の機能し何が機能しなかったのかを判断してゆかないといけない。



 今回の震災で、被害の割に予想よりも早い回復を見せたのは、サプライチェーン(モノの生産供給構造)である。一次は市場から枯渇した米や水、納豆などの生活物資は、西日本地域での増産や日夜を問わぬ工場の復旧作業のおかげでほぼ1ヶ月で回復した。


 また、日本の産業におけるサプライチェーンの代表業種である自動車も、予定よりも早く生産が正常化される見込みとなっている。
 実は、自動車は2−3万点という膨大な部品の塊である。この部品を、自動車メーカーの需要に応じて各部品メーカーが生産し、これを中間製品にし、最終的に組み立て工場で組み上げる。


 当然、被災地域にも数多くの部品工場が存在し、大きなダメージを受けた。


 サプライチェーン復旧の最大の難関となったのは、代替の効かない自動車専用のカスタムCPUであった。自動車用のカスタムCPUを生産している工場は少なく、そのメインの工場が大きな被害を受けたのだ。
 当初、その被害の甚大さから夏までの復旧は困難と言われていたが、各メーカーや関連企業からの膨大な人と技術の投入により、ここも6月1日より生産が部分再開された。
 民間部分の回復は、当初予想よりも大きく短縮できた。



 それに対して、公共部分である行政機能の回復、仮設住宅建設や義援金分配などは遅々として進んでいない。仮設住宅の建設に関しても、一定量の建材や設備の確保は出来ているが、建設がなかなか進まない状態になっている。
 この原因には多種多様なものが存在すると思われるが、最大の原因は事前想定と法制度の不備にあると思われる。




■想定の甘さと法の不備


 国はこれまでの災害を受けて、災害対策の様々な法律を制定してきた。特に阪神大震災以降は、震災対策の法律と仕組みの構築が一気に進んだ。


 しかし、この法律と仕組みには非常に大きな問題が内在していた。


 実は、災害対策の法律における救援主体は、あくまでも「都道府県や市町村などの地方自治体」であり、国は地方自治体の求めに応じて支援し対応する形となっている。
 今回の大震災のように、非常に広い範囲にわたり、地方自治体の機能が失われた場合、震災対策のために作られてきた法律では対応しきれない部分が大きいのである。


 また、原子力事故への対応のため、膨大な時間と人的物理的資源がそこに割かれてしまい、救援や復興のための議論がなかなか進まなかったというのも理由であろう。


 役所としては、その対応手段や方策が法律に規定されていなければ、いくら非常時であっても、動けない。そして、たとえ余剰能力があったとしても、それを役所の勝手判断により使える環境にはない。
 万が一、それを許せば、行政による暴走が許される事になってしまうからである。



■人的リソースの不足



20110610



 被災地救援の遅れが指摘されているが、このグラフを見ればわかるように、実は国の直轄部分のインフラに関しては非常に早い段階で回復している。


 確かに、国が直轄する国道や高規格道路、重要港湾は元々の規格が厳しく、破壊から回復させやすい構造になっている。予算が限定される県道や市道などは国道ほど厳しい規格はない。その為、大規模な破壊に対して脆弱であり、回復も難しいという基礎構造はある。


 しかし、国の直轄部分以外のインフラに関しては未だ回復の目処すら立たないものまである状態であり、あまりにも遅すぎると言わざる得ないだろう。



 なぜ、このようなことになっているのか、将来に向けての教訓とするために、今回の行政の機能不全の原因を取り除く必要があるだろう。


 一番の問題は、人的リソースの不足である。
 行政を担当する地方公務員の多くが、自身や家族が被災してしまい救援を行えない環境になってしまった事実がある。
 また、通常時の職員数では、災害処理を賄えないことも確かであろう。当然、平時からこれを補う術を用意しているか、していないかで大きな違いが出てくるはずである。



 当然、国も地方もこれまで何もしてこなかったわけではない。
 災害対策基本法により都道府県や市町村は個別の防災計画や防災マニュアルを策定してきた。また、周辺自治体などとの協力と連携体制を整えてきた。


 しかし、ここには大きな不備があり、今回のような被災地域が広範囲に渡る場合の想定が甘かったのである。
 事前の自治体間の協力体制と言っても、それは日頃から関係が深い周辺や近隣地域に限定されており、遠方地域との連携は脆弱であった。お互いが被災地域となってしまい応援職員を出す余裕がなかったのである。


 今後、この問題を解消する手段として、距離の離れた自治体との連携協力体制の構築が必要となるだろう。
 また、地域においては、予備自衛官のように、役所OBなどの登録制度を制定し、即戦力となる人材を拡大する必要があるといえるだろう。


 何を行うにも業務に精通し、指揮が出来る人材が必要となる。これを確保することが行政の義務となる。



■ボランティアと責任


 また、今回の災害において、これまで以上に災害ボランティアの存在が大きくクローズアップされた。しかし、個別の実態は不明確であり、一部では住民との問題も発生しているようである。


 大規模災害時のボランティアの存在は非常に尊いものであり、非常に重要なものである。
 しかし、ボランティアというものはあくまでも善意で成り立ち、その責任に関しては非常に曖昧なものともなっている。


 公務員など自治体職員が行った又は必要であることを知りながら行わなかった行為(不作為責任)は、被害者が地方自治体に対し損害賠償を求めることが出来る。
 しかし、ボランティアの場合、その責任所在が不明確であり、保証できる財力があるかどうかも不明であるし、それを求めるのも酷な話となる。



 また、ボランティアの怪我や疾病に対する保障に関しても、不明確な部分が多い。
 行政支援の過程で死亡したり、大怪我をした場合、その責任を誰がとるのか、すべて自己責任というのもおかしな話となる。


 現在、ボランティア保険などの制度があり、行政ではその加入を勧めているが、その費用は個人負担であり、その加入も完全に義務付けられているものではないし、確認も取りにくい。


 同時に、ボランティアは自発的意志で行われるものであり、確実に必要な場所に必要な人数と人材を供給できる環境にもない。




 だからこそ、ボランティアを守り発展させるための施策が必要となる。
 すでに存在するがボランティアセンターの設置や登録制度に行政がどのように関与するか。中にはボランティアを名乗り不正を働く人もいる。
 善意のボランティアを保護するための管理監督する制度と環境整備、それを実現するための予算付けが必要となろう。  

 また、これを実際の災害時に活かすためには、前述の他の自治体からの応援職員や自治体OBを非常勤採用するなどして、公務員である指揮官を確保するすべが必要となろう。



■今なにが必要なのか?


 大震災から3ヶ月が経過し、現場の環境と被災者の状況は、急性期から慢性期に入ったといえる。当然、必要なモノも変化し、必要な対応も日々変化してきている。


 すでに、自力で復興のために動き出している人もいれば、まだ、被害から立ち直れない人たちも多く存在する。とかく、環境や立場の違いが拡大すればするほど、意見の対立は大きくなり、その調整はどんどん難しくなってゆく。
 この問題を解消するため、政治は「行政責任と出来ないこと」を明確化する必要がある。政治と行政が嫌われ役を果たさない限り、問題の解決はどんどんむつかしくなるだろう。




 非常時のために、平時であるからこそ出来ることも数多くある。国民の生命、安全、財産を守ることこそが国の一番の仕事であり、住民の生命、安全、財産を守ることが地方自治体の仕事である。
 まずは優先順位を付けて、危機予測と安全対策を再考し、必要な対応をすすめることが、政治と行政に求められることではないだろうか?


渡邉哲也

 


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プロフィール

渡邉哲也(わたなべ・てつや)
1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒。貿易・卸の企業に勤務の後、独立。複数の企業運営にも携わる。
仕事上、海外の経済情勢に精通。ネットを通じて発信している内外の政治・経済状況のリサーチと解析には定評がある。リーマンショックを当てた「ドル崩壊!」を監修、「完全にヤバイ!韓国経済」共著(彩図社)欧州危機を予言した「本当はヤバイ!欧州経済」を執筆、「日本はニッポン! 金融グローバリズム以後の世界」共著など金融や経済に関わる著作を行っている。また、政治や経済に関わる様々な著作の企画や監修にもあたっている。

人気経済ブログ「代表戸締役 ◆ jJEom8Ii3E の妄言」を運営。
http://www.watanabetetsuya.info 連絡先はinfo@watanabetetsuya.info



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