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2011年03月28日

リスクのとらえ方 〜放射線の怖さについて寄稿して頂きました〜

東京大学大学院薬学系研究科・医薬政策学特任助教の五十嵐 中 氏に寄稿して頂きました。
「放射能、なんだか分からないけど怖い!」 という方におススメです。


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「正しく」怖がる、放射線

 

◎いま、そこにある危機

「○○(会社名)も認めていたとおり、現状では●●の人体への影響はきわめて深刻な状況である。
東京大学の専門家および国立がん研究センターの統計データによれば、●●を30分?1時間に1回、数分ずつ浴び続けることで、数百種類もの発がん性物質を体内に取り込むことになる。ほとんど全てのがんに「かかりやすく」なる状態が生じ、その可能性は50%上昇。一部のがんについては540%の上昇が見込まれる。

心筋梗塞や呼吸器系疾患にかかる可能性も、100%程度上昇する。
また自身の被曝がなくても、●●を浴びた人の近くにいる場合、やはりがんにかかりやすくなるという。

 すべてを総合すると、30歳の男性で平均余命が2.3年短縮。生涯の医療費も、1人当たり200万円以上増える見込み。
 一部省庁や国連の関連機関もその危険性を重視しており、●●への曝露を防ぐべく、可能な限りの努力を継続中である。だが●●の中毒性もあって効果は不十分で、予断を許さない状況にある。 」


…いかがでしょうか?
一刻も早く東京を離れようと思いましたか?
あるいは、家の窓に目張りをしますか?
もしくは、気分を落ちつかせるために、「とりあえず一服…」と思ったりしましたか?


一服しようと思った方に、残念なお知らせがあります。●●は放射線ではありません。まさに今、あなたが火を付けようと思ったタバコです。○○は、東京電力と同じような巨大企業、JTなのです。

 

◎リスクファクターって?見えないものも、見えるものも…

 放射線は目に見えませんし、危険性があまり伝えられていなかった分、どうしても恐怖心を抱いてしまいます。
 でも、放射線もタバコも排気ガスも、「体に害を与えうる」という意味では、みんな同じものです。

 そしてタバコの場合でも、自分が吸っているのと、自分は吸わないけれども職場の同僚や家族が吸っているのと、たまたま道の向こうを歩いている人が吸っているのとでは、危険性は全く変わってきます。


 放射線も同じことです。福島原発のそばで懸命に作業をされている方と、そこから220km離れた東京にいる方では、危険性は違います。

 ここでは、「東京に住んでいる方にとって」放射能がどの程度危ない、どの程度怖い物かを、身近なタバコと比較して考えてみることにします。


 放射線やタバコなど体に害を与えうるものを、まとめて「リスクファクター(危険因子)」と呼びます。そして各危険因子の怖さや危なさを評価するときには、3つの「どれだけ?」を考える必要があります。

 

◎危なさ・怖さの評価法 「どれだけ」×3
 
 1. 危険因子がないときに、どれだけの可能性で病気にかかるか? 
  タバコを吸わない人や、今回の事故による放射線を全く浴びてない人が、どの程度の可能性で病気にかかるかをさします。

 2. 危険因子に、どれだけの量曝露(ばくろ)されたか?
  「曝露」は、タバコを吸ったり、放射線を浴びたりすることをさします。危険に「曝される(さらされる)」と考えればわかりやすいと思います。
 タバコを1日5本・1年だけ吸ってやめた人と、1日3箱・40年吸い続けている人とでは、病気にかかる可能性はもちろん変化します。放射線も同様に、どのくらいの量浴びたかによって、危険性は変わります。

 3. 曝露されたことによって、病気にかかる可能性がどの程度上昇するか?
  "2"で求めた量さらされたときに、ある病気にかかる可能性が何倍になるかの評価です。病気にかかる仕組み(放射線によってDNAが破壊されるとか、タバコに含まれるタールによって細胞ががん化するとか)を評価するのではなく、病気にかかる可能性がどの程度増えるのかを数字で評価するのです。


 3つまとめてみましたが、今までの報道では、1の部分が欠けていたかもしれません。次に少し脱線して、"1"を抜かして考えるとどうなるかを考えてみましょう。

 

◎「2倍になる」っていうけれど… なぜ、元々の危険性が大事?

 10円玉を投げて、数字の面が出る可能性は50%です。ここでイカサマをして、平等院の側(いわゆる表)が向かい合うように2枚の10円玉を貼り合わせれば、100%数字の面が出ます。50%が100%になるから、確率は「2倍に増える」わけです。

 一方、ジャンボ宝くじを1枚だけ持っているA君と、2枚「も」持っているB君を比べるとどうでしょう。1等2億円が当たる可能性は、B君のほうがA君よりもやはり「2倍に増える」ことになります。でも、2億円が当たる確率はごくわずか。1枚あたりたった1000万分の1ですから、2倍になっても1000万分の2=500万分の1です。1時間に1回抽選があったとしても、大当たりの可能性は570年に1回。何とも気長な話です。

 
 10円玉も宝くじも、「2倍に増える」ことは間違いありません。しかし、「50%が100%」と、「1000万分の1が500万分の1」では、全く意味が違います。だからこそ、1番で述べたような「元々の危険性」を考えることが重要なのです。

 

◎受動喫煙、どれだけ危険なの?

 これを踏まえて、受動喫煙と放射線の危なさを比べてみましょう。


 まず、受動喫煙です。受動喫煙については、国立がん研究センターのデータがあります。
 女性が生涯のうちに肺の腺がんにかかる可能性は、35人に1人です。これが、1番で述べた元々のリスクです。

 そして2番と3番です。「1日1箱以上たばこを吸う夫がいる」場合と、吸わない夫がいる場合を比較すると、たばこを吸う夫がいる方が、肺の腺がんにかかる可能性が2.2倍に増えます。

 「35人に1人」の可能性が2.2倍になりますから、「35人に1人」が「35÷2.2=16人に1人」になるわけです。

 

◎空間の放射線、どれだけ怖いの?

 続いて、東京の放射線です。本来は同じ部位のがんで比較すべきなのですが、放射線によって「かかりやすさ」が最も大きく変動する白血病を例にとります。


 女性が生涯のうちに白血病にかかる可能性は、171人に1人。これは、受動喫煙と同様、がんセンターのデータです。

 そして原爆被爆者の方のデータによりますと、放射線を浴び続けて、累積の量が1000ミリシーベルト(=100万マイクロシーベルト)に達すると、浴びていない人と比較して4.15倍白血病にかかりやすくなります。

 あとは、1000ミリシーベルト浴びるのにかかる時間を考えればよいわけですが、ちょっと困ったことがあります。
 東京の放射線レベルは、地震発生後徐々に低下しています。今日 (3月27日)の新宿区で観測された平均値は、1時間当たり0.114マイクロシーベルト。このレベルですと、1年間維持してもおよそ1ミリシーベルト。胸のCT検査1回分。1000ミリシーベルトに達するまでに、1000年かかってしまいます。


 無理な仮定をおきましょう。3月15日に観測された最大値、1時間あたり0.809マイクロシーベルトが、今後ずっと続くとします。そして、累積の量を半分、500ミリシーベルトにしましょう。

 すると、1年間に浴びる量が0.809×24×365=7086マイクロシーベルト。500ミリシーベルト=50万ミリシーベルトに、50万÷7086=70.6年で達します。

 
 まとめ直しますと、「3月15日に観測された最大レベルの放射線を、屋外で2081年まで浴び続けると、白血病にかかる可能性が『171人に1人』から『171÷(4.15×0.5)=82人に1人』になる」と分かります。先に、寿命が来てしまいそうです。

 

◎水道水の放射線、どれだけ危ないの?

 最近問題になっている、水道水の乳児に対する危険性はどうでしょう。異常値が検出されたのは、「ヨウ素131」という放射性物質です。131は、さまざまある「ヨウ素」のタイプのうちの1つと考えてください。自然界にはほとんど存在しませんので、原発からやってきたことはほぼ間違えありません。

 詳細は少し省略しますが、環境基準値 (1kgあたり100ベクレル) の2倍、1kgあたり200ベクレルのヨウ素131が入った水を飲み続けたときの、甲状腺がんの危険性を考えましょう。


 生まれてきた女の子が、20歳までに甲状腺がんにかかる可能性は、かなり高めに見積もっても2万?2万5000人に1人。
 200ベクレルのヨウ素131が入った水を毎日1リットル飲み続けて、なおかつすべての放射線が甲状腺に蓄積したとしますと、その量は1年で268.3ミリシーベルト。3年8ヶ月飲み続けて、1000ミリシーベルトの蓄積になります。

 チェルノブイリ事故の後の追跡調査研究のデータによれば、この量の放射線を浴びると、甲状腺がんになる可能性は3.15倍になります。


 「たった4年で3倍?」と慌てないでください。まず、この値は異常値がずっと続く、かなり強い仮定をおいています。さらに、最初にお話ししたとおり、倍率だけでなく元々の危険性を考えることが大事です。甲状腺がんにかかる可能性は多くとも20,000人に1人ですから、それが3倍になっても20,000÷3.15=6,300人に1人。受動喫煙の危険性とは、文字通り「桁が違い」ます。


 こちらもまとめ直しますと、「環境基準値の2倍のヨウ素131が入った水を毎日1リットルずつ、3年8ヶ月間飲み続けると、大人になるまでに甲状腺がんにかかる可能性が『20,000人に1人』から『20,000÷3.15=6,300人に1人』になる」となりました。
 


◎おわりに

 受動喫煙「夫が毎日タバコを1箱吸っていると、肺の腺がんにかかる可能性が『35人に1人』から『16人に1人』に上昇」

 空中の放射線「3月15日の都内最高レベルの放射線を70年間屋外で浴び続けると、白血病にかかる可能性が『171人に1人』から『82人に1人』に上昇」

 水道水の放射線「環境基準値の倍量汚染された水を1リットルずつ3年8ヶ月飲むと、大人になるまでに甲状腺がんにかかる可能性が『20,000人に1人』から『6,300人に1人』に上昇」


 …絶対安心だとは言えません。でも、必要以上に怖がる前に、もう一度深呼吸してみましょう。「遠くの親戚より、近くの他人」。遠くの放射線より、近くのタバコ。もし身近にタバコを吸う方がいらしたら、ドラッグストアに水やトイレットペーパーを買いに行くついでに、ニコチンパッチやニコチンガムを買ってみてはいかがでしょうか?


 改めて、原発の近くで危険な作業に従事している方に感謝しつつ、この稿を終えたいと思います。


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東京大学大学院薬学系研究科・医薬政策学特任助教
一般社団法人 医療経済評価総合研究所 代表

五十嵐 中(いがらしあたる)

 



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