水銀混入ごみにより東京23区の清掃工場閉鎖が相次いでいる。流山市議・松野豊さんの「統一地方選挙 良い候補者の見分け方」をご紹介。

2010年09月23日

渋谷区立宮下公園の問題を整理してみました。

宮下公園、社会学者の宮台先生もラジオで取り上げてくださったように、話題になっています。


この件については、論点が多く非常に複雑なうえ、誤解がかなり多いようにも思います。
私自身は議決にあたって賛成しましたが、今後正確な議論が行われるよう、また将来にわたって参考となるよう、できるだけ中立的な視点で論点を簡単にまとめてみます。時間が足りず、内容・文章とも十分練ったものにはなっておりませんが、取り急ぎ公開いたします。。
意見にあたる部分は斜体で表記します。


なお、このブログ記事をご紹介あるいはご引用いただきます場合、お手数ですがご一報いただけますと幸いです。
shibuya@s-kenpo.jp



○この件に関する過去のブログ記述
宮下公園運動施設管理条例について
http://blog.livedoor.jp/kenposzk/archives/51762059.html

宮下公園の一部閉鎖について
http://blog.livedoor.jp/kenposzk/archives/51820394.html

  


○基本的な枠組み
今回の契約については、NIKEジャパン社(以下ナイキ社)と渋谷区が宮下公園について契約を結び、

・宮下公園を10年間「宮下ナイキパーク」と呼ぶ(正式名称は「宮下公園」のまま)ネーミングライツの対価としてを年1700万円を渋谷区に支払う
・それに付随して、宮下公園の施設等を改修・新設する費用(推計4億円程度)をナイキが負担して工事を行い、区に寄付する
・さらに、ナイキ社が地域貢献として、公園施設を利用した地域活動を義務付ける


というものです。
これによって、宮下公園内に、従来のフットサルコートに加えてスケートボード場、クライミングウォールが設置されます。いずれも有料で利用する施設となり、所有は渋谷区となります。
公園全体の入園料はありません。場所の性格上夜間は閉鎖となります。

 

○論点整理
今のところ大きな論点としては以下。

A)公園をめぐる契約形態について
A−1)公園の私企業への売却にあたるのか
A−2)公園にネーミングライツは適用できるのか
A−3)公園を私企業が自由に整備していいのか
A−4)公園に私企業が大きな権限を持つことになるのではないか


B)契約について
B−1)ナイキ社が契約相手として妥当か
B−2)利権が絡むのではないか
B−3)公開入札もせず、不透明ではないか
B−4)不当に安価ではないか


C)手続きについて
C−1)民主的手続きを経ていないのではないか
C−2)住民の意思を反映していないのではないか
C−3)利用者の意思を反映していないのではないか


D)公園の機能について
D−1)公園の公共性について
D−2)スポーツの有料施設整備の是非
D−3)宮下公園の広場機能
D−4)野宿者(いわゆるホームレス)への対応
D−5)樹木の保存等について


E)強制的な執行手法について

 


○以下、順次説明していきます。


A)公園をめぐる契約形体について
A−1)公園の私企業への売却にあたるのか

上記のとおり、基本的には1)ネーミングライツ2)施設整備・寄付3)公園を利用した地域貢献活動、の複合です。整備された後の施設については区が管理することになります。
なので、「売却」にはあたりません。


A−2)公園にネーミングライツは適用できるのか

自治法238条1項5号の「商標権」で「普通財産」ですから、適用できます。


A−3)公園を私企業が自由に整備していいのか

基本的には寄付の枠組みなので、問題ありません。

(意見)この件では、ナイキ社から整備の提案があったのは事実ですが、それを区が精査したうえで協議し、区の意向に沿ったものに改められています。
実際、議会で民主党が提案した事項(広場機能の確保等)が反映されています。
ですから、「自由に整備」ではなくて、あくまで区の意向に沿った整備であると考えます。
cf.B−3


A−4)公園に私企業が大きな権限を持つことになるのではないか

ナイキの提案では競合排除のために各種イベントの事前確認と承認・否認の権利を求めていたようですが、これは認められていません。
なので、あくまで呼称をつけることができる権利に限られます。付随して地域貢献活動が義務付けられていますが、ナイキ社が大きな権限を持つとは言えません。

(意見)ネーミングライツ自体が巨大な看板での宣伝になる、公園が私企業の宣伝になることに対する反対のご意見もあります。一般的にネーミングライツでは名称の掲示であり、不必要に看板を乱立させる、ということは避けるべきだと私も思います。同様に、地域貢献活動も過剰にならないことが必要と思います。

 

B)契約について
B−1)ナイキ社が契約相手として妥当か

児童労働などの問題が指摘されていますが、これについては選定基準等が明示されていないため判断できません。

(意見)議会の議論では再三「ネーミングライツについて選定手続きと選定基準を明示すべき」と主張しています。この点、制度的に課題があると考えています。
ただ、それは事前に行われるべきことで、事後的に「この会社は児童労働で…」その他のという理由で契約解除はできないと考えています。
なお、私は区の調達一切において、児童労働などの産物を排除するよう提案しています(平成18年6月8日本会議)。


B−2)利権が絡むのではないか

実際に利権が指摘されるなら別ですが、噂でしかない段階ではなんとも言えません。


B−3)公開入札もせず、不透明ではないか

実際の経緯は、同時期に他社(リプラス:すでに倒産)も提案書を出しており、選定委員会を通じてナイキ社に決定しています。

(意見)これについても、ネーミングライツ手続きを明確にする必要があると考えています。提案を受け付けるのか否かを事前に明確にするべきで、制度上の改善を求めています。


B−4)不当に安価ではないか

施設整備等も含めての契約です。

(意見)不当に安価とまでは言えないと考えます。基本的にはネーミングライツの市場動向は価格下落が著しく、他の事例と比して安価とは思いません。

 

C)手続きについて
C−1)民主的手続きを経ていないのではないか

宮下公園運動施設条例が平成22年3月議会で議決成立しています。なので、民主的手続きを最低限は経ているといえます。
その他、区長発言や本会議質問、委員会報告などが行われています。

(意見)この点についても、私は不足があると思っています。
ただ、自治法の規定上、契約そのものを議決対象にすることはできません。また、負担のない形での寄附を議決対象にすることもできません。
今後、同様なケースで「ネーミングライツが妥当かどうか、大規模の施設整備寄付が妥当かどうか」などについて議会の十分な関与が可能になるよう知恵を絞っていきたいと考えています。


C−2)住民の意思を反映していないのではないか

何を持って住民意思を反映とするかどうか難しいところですが、地元の町会・商店街等から要望も出ておりますし、ある程度は住民意思を反映しているといえます。


C−3)利用者の意思を反映していないのではないか

前項と同様に何を持って意思を反映とするかどうか難しいところです。
こちらは何とも言えません。


(意見)一般的に渋谷区のように来街者の多い地域では利害関係者が拡大しますので、より丁寧な取り扱いが求められる(例えばパブリックコメントの活用など)と考えています。

 

D)公園の機能について
D−1)公園の公共性について

今回の件について「公園から低所得者が排除される」という論調等があります。
また、公園は公共空間として誰もが使える施設にするべきであって、若者対象の施設を多くすることには反対という声もあります。
一般的には、都市公園法などで定められた範囲を順守すれば最低限足りると考えられます。

(意見)色々な考え方があります。これからも引き続き議論が必要ですね。


D−2)スポーツの有料施設整備の是非

こちらも、都市公園法等によって施設を設置できる面積割合が決められております。従来のフットサルコートのように有料施設も設置が可能です。
また、十分な広場面積が確保されることとなっています。


D−3)宮下公園の広場機能

宮下公園は立地の特性で、デモ等の起点終点になりやすく、表現の場としての広場が重要です。設計上は十分な広さが確保されているようです。

(意見)これについては各種団体からの要望を受けて、渋谷区議会民主党として要請した項目の一つです。それを受けて当初計画から広場が拡大されました。


D−4)野宿者(いわゆるホームレス)への対応

30数名→4名となっています。区によると、区の斡旋によって自立支援施設やアパート、宮下公園駐車場脇などに移動したということです。
4名のうち1名は4月から、ナイキ化反対という主張もあって住んでいる、ということです。他3名については、他地域に移動するというお話も伺っています。


(意見)こちらについても会派で「福祉的な対応を強化すること」と訴え、それに対応して粘り強い対応が行われていると(いいなと)思います。
基本は自立支援の取り組みが重要ですから、そちらを強化していくべきではないでしょうか。
また、駐車場脇については、劣悪な環境であるという指摘もありますが、環境向上に取り組むよう要請しております。


D−5)樹木の保存等について

基本的には今ある樹木については状態が許す限り残る、と聞いています。

 

E)強制的な執行手法(行政代執行他)について


(意見)これはとても重要な論点なのですが、情報がまだ集まっていませんので、今後慎重に考えたいと思います。
今日の段階で、提起された「執行停止申立て」が却下されたそうですが、だからと言って政治的に「正当だ」ということもできないと思います。

(参考)
○渋谷区
区立宮下公園の代執行の公告について(報道)
http://www.city.shibuya.tokyo.jp/news/oshirase/miyasita_daishikkou.html
区立宮下公園の部分閉鎖について(報道)
http://www.city.shibuya.tokyo.jp/news/oshirase/miyasita_heisa.html
○その他
宮下公園の行政代執行に関し渋谷区へ提訴(ホームレス総合相談ネットワーク)
http://lluvia.tea-nifty.com/homelesssogosodan/2010/09/post-fc4b.html

 



以上です。
読みにくくてすみません…

(参考)
渋谷区が強制代執行−「宮下ナイキパーク」整備に向けテントなど撤去(シブヤ経済新聞)
http://www.shibukei.com/headline/7192/



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